薬物治療抵抗性の心因性勃起不全に対する行動療法を用いたセックスセラピー

木村 将貴(帝京大学 医学部泌尿器科学講座), 道場 勇太
日本性科学会雑誌 41(1): 53-62, 2023.
心因性の勃起不全(Erectile dysfunction:ED)の薬物治療についてはホスホジエステラーゼ5(Phosphodiesterase 5:PDE 5)阻害薬が一定の効果を示すことが明らかになっている。一方で,重度の性欲低下や興奮障害症例では薬理作用として催淫作用はないことから,その効果は期待できない。我々は,上記心因性EDに対して,独自に開発した行動療法を用いたセックス・セラピーを行いその効果を検討した。心因性EDの診断でセックス・セラピーを開始した全31症例中,条件を満たした14症例(カップル)を検討した。症例の平均年齢は35.5歳,パートナーの平均年齢は35.1歳,パートナーとの交際(結婚)期間は40.1ヵ月であった。婚姻関係があるカップルは6カップル(43%),子供がいるカップルは3カップル(21%),挙児希望のカップルは5カップル(36%)であった。セックス・セラピーのセッション回数は中央値5.5回,継続期間の中央値は4.3ヵ月,最終的な効果判定で効果ありと判断したものが11症例(79%)であった。今回の我々の検討から,PDE5阻害薬に代表される薬物治療の効果が十分に得られない心因性EDに対して,セックス・セラピーが一定の効果を示すことが示された。そのためには,パートナーと良好な関係を維持し,行動療法に取り組み,十分な回数を重ねることが重要であった。(著者抄録)