中高年のセクシュアリティ調査から 性行動および配偶者間のセックスレス化について

荒木乳根子(田園調布学園大学), 金子和子, 杉山正子, 山中京子, 石丸径一郎, 今井伸, 内田洋介, 遠藤麻貴子, 堀口貞夫, 堀口雅子, 村田佳菜子
日本性科学会雑誌 41(1): 141-152, 2023.
日本性科学会セクシュアリティ研究会では過去に3回、中高年のセクシュアリティ調査を実施した。目的は実態を把握し、より良い性生活への示唆を得ることである。前回調査から10年を経て、今回、全国在住の40~80代の男女3023人を対象に、2022年2月、インターネット調査を実施した。調査内容は性についての考え、性的欲求と性生活、性機能、相手との関係性などである。本論文では男女の全体の性行動を示すと共に、配偶者間のセックスレス化に関して過去に実施した調査と比較検討した。全体の性交頻度は、年代ごとに減少、男女差が目立ち、有配偶者は単身者より活発だった。配偶者間のセックスレスは、2000から2012年にかけて顕著に増加したが、今回は女性回答では増加したものの、男性回答では大差なかった。配偶者以外の相手との「親密な付き合い」はほぼ2012年同様であり、性規範は強まっていた。性欲は増加傾向が認められるが、相手との「性交渉を伴う愛情関係」を求める割合は減少傾向であり、配偶者間の関係性は希薄化していた。男女の性欲の乖離が大きい中で、どのように双方が満足できる性生活を実現できるか、重要な検討課題である。(著者抄録)