女性Bisexual当事者の自覚から自認までの過程に関する質的検討 両性愛傾向への気づきと受け入れ

金智慧(早稲田大学)
日本性科学会雑誌 39(1): 45-58, 2021.
本研究の目的は、女性Bisexual当事者の自覚前から自認までの一連のプロセスを見出し、その過程における心理的悩みや葛藤を明らかにすることである。本研究では、生物学的に女性であり、自分を女性Bisexualであると認識している20~30代女性7名を対象にインタビュー調査を行い、質的な分析を行った。語りから見出された<自覚前のセクシュアリティ>、<自己の性イメージ>の2つの特徴を基準に、3つの自覚・自認プロセスを構築し、各プロセスにおいて当事者が抱え得る心理的問題が明らかになった。当事者達の自覚・自認体験は多様であったが、共通して自分の同性愛傾向と異性愛傾向の両方に気づき受け入れる2回以上の自覚と自認を体験していることが明らかになった。これはLesbianやGayとは異なる女性Bisexualの特異性として捉えることができる。また、自覚・自認体験に影響する諸要因から考えられる女性Bisexual当事者への支援は、2回以上の自認・自覚体験という特徴を考慮するとLesbianやGayへの支援の形より複雑・繊細になることが考えられた。(著者抄録)