性と食との関係に関する考察 女性の挿入障害(ワギニスムス)の症例を通して

渡辺景子(日本性科学会カウンセリング室)
日本性科学会雑誌 22(1): 39-45, 2004.
女性の挿入障害と拒食を合併した症例(25歳)を通して,性と食の関係について考察した.女性の挿入障害は,異物・他者を受け入れることの拒否であり,身体性の拒否と考えられる.拒食は,取り入れ,及び成熟した女性の身体への拒否である.本症例の場合,潔癖で過干渉,かつ感情の激しい母親との間でほどよい母性の体験をすることができなかった.18歳時に拒食のエピソードがあったが,それについては触れたがらず,自己不全感の埋め合わせという意味合いをもつ挙児願望の強さから,挿入障害のための行動療法的アプローチには熱心に取り組んだが,精神療法には抵抗を示した.仮に18歳の時点で,拒食の問題,それを通しての母親との関係に取り組むことが可能であったなら,結婚後に露呈した性の問題は防げた可能性がある.本症例の場合,性と食は密接な関係があり,未解決な食の問題が性の問題として出現した典型的なケースと考えられた