トランス男性(FTM)の性自認と多嚢胞性卵巣症候群など高男性ホルモンを示す病態との関係

遠藤俊明(札幌医科大学産婦人科), 馬場剛, 池田桂子, 本間寛之, 池田詩子, 逸見博文, 木谷保, 板橋詠子, 藤井美穂, 池田官司, 舛森直哉, 斉藤豪
日本性科学会雑誌 38(1): 3-15, 2020.
当院を受診したトランス男性の生殖内分泌学的特徴から多嚢胞性卵巣症候群PCOSの頻度が、一般集団よりはるかに高いことが判明した。PCOSは男性ホルモンが高いことが診断基準の一つであることから、トランス男性の原因として男性ホルモン高値の可能性が考えられる。先天性副腎過形成CAH症例では胎児期に高男性ホルモンに曝露される。CAHの女児として生まれて、女性として育てられた場合の性別違和を感じる頻度が一般の頻度よりはるかに高いことが報告されている。このことから、トランス男性の一部には胎児期の男性ホルモン曝露を原因とするグループが含まれている可能性がある。しかし、トランス男性の多くはこのようなエピソードは無く、その原因は不明のままであり、今後の研究が必要である。(著者抄録)