勃起障害の症例 パートナーとの関係

渡辺景子(日本性科学会カウンセリング室)
日本性科学会雑誌 23(1): 95-101, 2005.
39歳男(M夫).勃起障害およびパートナーとの関係悪化を主訴とし,日本性科学会カウンセリング室に来室した.26歳の妻(M子)との結婚歴は2年7ヵ月であった.治療回数はM夫のみ3回,二人で7回の計10回で,最終的に中断に至った.M夫は,最後まで,性的な問題に焦点をあてる行動療法的アプローチに入ることはなかった.理由として,M夫は勃起障害の問題に端を発した関係性の悪化と捉えていたが,それ以上に二人の関係性の問題が大きく根深かった事が挙げられた.またもう一つの問題として,M子の未解決な親子関係の問題が推測された.治療はM子の問題が出だしたところで中断となり,これにはM子が自分の問題が露呈することを恐れたことに大きな理由があると考えられた.この1例からも,最近の勃起障害の治療においては,治療初期からパートナーとの関係を考慮に入れて治療することが,より重要になってきていると思われた